脚気、壊血病、それにペラグラ。
ビタミンが不足してしまうことで、これらをはじめとする恐ろしい病気が発生する可能性があります。
今回は、数あるビタミンの種類を紹介しながら、それが不足した際の欠乏症、また欠乏症が生じないようにするために必要な摂取量について紹介していきます。
この記事の内容
脂溶性ビタミン
ビタミンA
ビタミンAは、レチノールとも呼ばれる脂溶性ビタミンです。
目の光刺激を受け取る部分にて、重要な働きをしています。
欠乏症
ビタミンAが不足すると、主に目に影響が生じます。
子どもでは角膜乾燥症、大人では夜に目が見にくくなる夜盲症になる可能性があります。
その他、皮膚の乾燥、免疫力の低下によって、風邪などの感染症にかかりやすくなったりします。
必要な摂取量
成人の場合、ビタミンAを男性で900μg、女性で700μg程度の量を摂取していれば不足の心配はありません。
ただし、現在の日本人の摂取量は500μg程度しかありませんので、もう少し多めに摂取したいところです。
ビタミンD
ビタミンDは、腸管でのカルシウムやリンの吸収を促進する働きがある脂溶性ビタミンです。
欠乏症
ビタミンDが不足すると、腸管でのカルシウムやリンの吸収が抑えられてしまうため、骨の形成に影響してしまいます。
子どもではくる病、大人では骨軟化症と呼ばれる疾患が発生する場合があります。また高齢者においても、長期間にわたってビタミンD不足気味の状態が続くと、骨粗しょう症を原因とする骨折のリスクが高くなることが知られています。
必要な摂取量
成人では、8.5μg程度を摂取できていると、不足の可能性は低いと考えられます。
また、ビタミンDは紫外線にあたることで生成されるため、たとえば夏に紫外線を浴びていれば、もう少し摂取量が少なくても良い可能性があります。
ですので、食事に加え、外に出て適度に紫外線を浴びることも重要になります。
ビタミンE
ビタミンEは、抗酸化作用のあるビタミンです。人間の細胞膜にも存在しています。
欠乏症
動物実験の結果では、ビタミンEが不足すると、不妊や脳軟化症、肝臓や腎臓に障害が起きることが報告されています。
その他、ビタミンEが不足することにより、活性酸素が血液中に多くなり、それが赤血球を破壊することで溶血性貧血が生じる可能性があります。
必要な摂取量
通常の食生活をしている場合、ビタミンEが不足することはありません。
そのため、一般的な日本人が摂取しているビタミンEの量である6.5mg程度を摂取していればよいでしょう。
ビタミンK
ビタミンKは、血液の凝固に関わっている脂溶性ビタミンです。
フィロキノンやメナキノンなどの種類があります。
欠乏症
ビタミンKが不足すると、血液凝固が障害されます。
ケガをして血が出た場合、普通だと血が固まって出血は収まりますが、その凝固がおこらず、血が止まりづらくなります。
また、骨形成を調節していることから、不足によって骨形成障害が生じる可能性があります。
必要な摂取量
通常の食生活を送っている人では、血液凝固障害が起こっている人がほとんどいないことから、多くの人で不足していないと推測されます。
そのため、ビタミンKの欠乏症が起こっていない人で、ビタミンKの多い納豆を摂取してない人の摂取量の平均値である150μg程度が目安となります。
水溶性ビタミン
ビタミンB1
ビタミンB1は、グルコース代謝時に利用される水溶性ビタミンの一種です。
チアミンとも呼ばれ、栄養ドリンク等にもたくさん含まれています。
欠乏症
ビタミンB1の欠乏症は、脚気です。末梢神経に障害をきたします。その他、神経疾患であるウェルニッケ脳症なども生じます。
必要な摂取量
ビタミンB1はグルコースを代謝する際に利用されることから、エネルギー摂取量が多い人では、それに応じてたくさんのビタミンB1が必要になります。
1000kcalあたり0.42mg程度摂取していれば、不足の心配はないでしょう。白米やアルコール飲料など、ビタミンB1が少なく高カロリーの食品を多く摂取する方は、特に意識して摂取する必要があります。
ビタミンB2
ビタミンB2は、主に脂質の代謝に関与している水溶性ビタミンです。リボフラビンとも呼ばれます。
欠乏症
ビタミンB2が不足すると、子どもでは成長障害が生じます。
そのほか、ニキビや口内炎、口角炎などが生じます。
必要な摂取量
ビタミンB2は脂肪の代謝に関与しているビタミンなので、ビタミンB1と同様に、エネルギー摂取量の増加に伴って必要量も増えます。
1000kcalあたり0.6mgの摂取が推奨されています。
ナイアシン
ナイアシンは、ニコチン酸アミドとも呼ばれる水溶性ビタミンの一種です。
欠乏症
ナイアシン欠乏症の代表はベラグラです。
「皮膚の痛み」を意味するペラグラは、光にあたった際に痛みが生じたり、発疹がでたりします。最悪の場合は死に至る場合もある恐ろしい病気です。
必要な摂取量
ナイアシンも、エネルギー代謝に関わっているビタミンです。なので、エネルギー摂取量に応じて必要量が変わってきます。1000kcalあたり5.6mg程度の摂取が目安となります。
ビタミンB6
ビタミンB6は、アミノ酸を代謝する際に利用されるビタミンです。
欠乏症
ビタミンB6が不足すると、ペラグラのような症状があらわれたり、ニキビや舌炎、またうつ状態が生じたりすることが知られています。
必要な摂取量
ビタミンB6はアミノ酸の代謝に利用されるため、たんぱく質の摂取量に応じて必要量が変わってきます。たんぱく質1gあたり0.025mg程度の摂取が目安となります。
ですので、たとえばたんぱく質60gを摂取する方だと、1.5mg程度の摂取が必要という計算になります。
ビタミンB12
ビタミンB12は、たんぱく質と結合した状態で存在する水溶性ビタミンです。
胃から分泌される胃酸やペプシンによって吸収が促進されます。
欠乏症
ビタミンB12は、赤血球細胞やDNAの合成に関わっています。そのため、ビタミンB12が不足すると、赤血球が正しく作られない巨赤芽球性貧血や、末梢神経障害が発生します。
必要な摂取量
1日に2.4μg程度の摂取が必要とされています。この量は、巨赤芽球性貧血を回復できる量を基準として設定されています。
なお、高齢者の場合は吸収率が低下している可能性があるため、この量よりもやや多めに摂取することを心がけると良いでしょう。
葉酸
葉酸は、赤血球の成熟やDNAの合成に関与しています。
特に女性に積極的に摂取してもらいたいビタミンです。
欠乏症
葉酸が不足した場合、赤血球が正常に作られない巨赤芽球性貧血が生じる可能性があります。
また、妊娠直後の時期において、お母さんに葉酸が不足してしまうと、胎児に神経管閉鎖障害が生じるリスクが高くなることが知られています。
必要な摂取量
巨赤芽球性貧血のリスクを回避できるだけの摂取量として240μgの葉酸摂取が必要となります。
また、妊娠する可能性のある女性では、先の神経管閉鎖障害を予防するため、+400μgの摂取が望まれます。この量を食事から摂取するのは困難なため、サプリメント等において摂取すると良いでしょう。
ビタミンC
ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれる水溶性のビタミンです。酸味があることで知られています。
欠乏症
ビタミンCが不足すると壊血病を発症します。皮膚がもろくなり、それにより出血傾向を呈します。また、疲労や貧血等の症状があらわれる場合もあります。
必要な摂取量
ビタミンCを1日に10mg程度でも摂取できていれば、壊血病を防ぐことはできるとされています。
しかし、壊血病を予防できる以上にビタミンCを摂取することで、心血管疾患の予防や抗酸化作用が期待できます。血液中のビタミンC濃度を最大にできる量として、1日に100mg程度が推奨されていますので、これを目指すと良いでしょう。
この量は不足を防ぐために必要な量というよりも、より多くの健康効果を得ることを目標とした量のため、余裕のある方は目指すといった認識が正しいかと思います。
まとめ
今回はビタミンについて簡単にまとめました。
ビタミンが不足することによって、恐ろしい欠乏症が生じる場合があります。
これらの欠乏症は、通常の食生活を送っている上で生じることは少ないものですが、食生活が偏っている人では、発生する可能性もあります。
栄養素ごとの優先順位も見極めながら、適切な量のビタミンを摂取していきましょう。
参考)
・厚生労働省:日本人の食事摂取基準 2020年版(案)(2019)
・日本栄養・食糧学会 編:栄養・食糧学用語辞典 第2版, 建帛社(2015)
・上西一弘:栄養素の通になる 第4版, 女子栄養大学出版部(2016)
この記事を書いたトレーナー

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