「テストステロン」という言葉、最近よく聞かれるようになりました。
以前は医学分野でのみ聞かれていた言葉だと思うのですが、最近の筋トレブームの影響か、一般の方の間でも聞かれるようになった印象です。
今回はテストステロンについて、テストステロンとは何か、私達の体ではどの様な働きをしているのか、テストステロンの分泌を増やすためにはどのようなことが必要になってくるのか解説したいと思います。
この記事の内容
テストステロンとは?
男性ホルモンの1種
テストステロンは、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンの1種です。
男性ホルモンには主に3つの種類があり、これらはそれぞれ分泌される場所が異なります:
- テストステロン:精巣
- デヒドロエピアンドロステロン:副腎
- アンドロステンジオン:副腎
男性ホルモンは精巣と副腎で作り出されますが、そのうち精巣で作られるものがテストステロンです。
男性ホルモン全体の95%をこのテストステロンが占めています。
女性でも卵巣でテストステロンが作り出されますが、その量はごくわずかです。
参考)
・アステラス製薬:男性ホルモン
分泌は脳でコントロール
テストステロンの分泌は脳からの命令によってコントロールされています。
具体的には、脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンによって分泌が促進されます。テストステロンが十分にある場合は分泌が抑えられ、少ない場合は促進されまし。
なお、テストステロンは精巣にてコレステロールから作成されます。これは他のステロイドホルモンと同様で、最終的に17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼと呼ばれる酵素の働きによってテストステロンが生成されます。
なお、分泌は日常生活の中でも多い時と少ない時があり、夜間の寝ている間から早朝にかけて分泌が促進されていきます。
参考)
・大東製薬工業株式会社:テストステロン分泌のコントロールについて
テストステロンの効果
テストステロンのもつ効果について解説していきます。主に以下の3つの効果があります:
- 筋肉量の増加
- メンタルヘルスの向上
- 骨粗しょう症の予防
効果1:筋肉量の増加
テストステロンは筋肉量の増加に関係しています。男性で筋肉がつきやすく女性でつきにくいのは、このことも関係しています。
テストステロンが筋肉量を増加させるメカニズムには、遺伝子的なものとそうでないものの2通りがあります。
まず遺伝子的なメカニズムについて解説します。
テストステロンは細胞内にあるアンドロゲン受容体と結合し、筋肉量を増加させるような物質を生成させます。その中には筋サテライト細胞と呼ばれる、筋肉を再生させる細胞の働きを活性化するものもあります。これらの働きにより、テストステロンは筋肉量を増加させます。
さらに、遺伝子的なもの以外にも、細胞内のカルシウムを増加させて筋力を増強したり、筋細胞の細胞死(アポトーシス)を抑えて筋肉量を維持したりと行った働きも確認されています。
こういったメカニズムによってテストステロンは、筋肉量を増加させるように働くのです。
参考)
・日本Men’s Health医学会:テストステロンと筋肉の関係
日常的に筋肉トレーニングを行う方では、テストステロンの分泌を増やしていきたいところですね。
効果2:メンタルヘルスの改善・向上
テストステロンにはメンタルヘルスを改善・向上する働きがあると考えられます。
少し抽象的になりますが、テストステロンは男性的な精神状態に関係しています。
まだ文明が発達していない太古の時代であっても、男性は外に出て狩りを行い、女性は家を守っていました。
現代でも、政界や経済界のリーダーたちは男性です。活力にあふれエネルギッシュな影響をテストステロンは与えてくれます。
実際に、テストステロンには冒険心や社会性、競争心といった、人生を前向きに過ごすために必要な精神状態を保つ働きがあるとされています。
参考)
・日経Gooday:男性の健康左右するテストステロン 仕事力にも影響
ですので、テストステロンの分泌量を増やすことで前向きな気持ちをもつことができるようになり、結果としてメンタルヘルスの改善・向上が見込めると考えられます。
効果3:骨粗しょう症の予防
テストステロンには骨粗しょう症を予防する効果もあるとされています。
人間を対象とした研究により、血液中のテストステロンの濃度と骨密度や骨折の間に相関があることが報告されています。さらに、テストステロンの投与により、骨量が増加したとの報告もあります。
これらの結果から、テストステロンが骨量や骨密度の減少に歯止めをかけている可能性が示唆されます。
参考)
・大東製薬工業株式会社:テストステロン補充療法に期待される効果
テストステロンの分泌に関わる要因
テストステロンの分泌には多くの要素が関わっています。
主に以下の4つが関係しています:
- 年齢
- 筋力トレーニング
- 体脂肪量
- 栄養素
以下で順に解説していきます。
要因1:年齢
テストステロンの分泌量は、年齢を重ねるにしたがって少なくなっていきます。
このような現象をアンドロポーズ:男性更年期と呼んだりもします。
参考)
・日経ARIA:老化ホルモンと若返りホルモン 黄金バランスを保つには
年齢が若い人よりも、高齢の人の方がテストステロンを増加させる必要性が高いと言えるでしょう。
要因2:筋肉トレーニング
筋肉トレーニングは、テストステロンの分泌量を向上させます。
運動を行うことでテストステロンは分泌されますが、その中でも筋肉トレーニングが最も多くのテストステロンを分泌させます。
参考)
・AREA dot:「筋トレ」1日10分、週3日で効果あり! 40歳以上こそオススメなワケ
これはテストステロンが筋肉に刺激を与えることによって分泌されやすくなることに関係していると考えられます。
要因3:体脂肪量
体脂肪はテストステロンの分泌量を低下させてしまいます。
これは、脂肪細胞から分泌されるアロマターゼと呼ばれるホルモンが関係しています。
アロマターゼはテストステロンなどの男性ホルモンを女性ホルモンに変換させる働きがあり、そのために作用を発揮するテストステロンの量が少なくなってしまう可能性があります。
参考)
・中頭病院:乳がんのホルモン療法について
すでに現在、体脂肪量が多いという方は、テストステロンの効果を最大限発揮するために、減量し、体脂肪を減らす必要があるかもしれません。
要因4:栄養素
先にも述べたように、テストステロンはコレステロールから作り出されるため、普段の食事からコレステロールが不足しないように注意しなければなりません。
コレステロールは肝臓でも合成されるため、不足するリスクは多くありませんし、とりすぎにも注意が必要な難しい栄養素ではありますが、積極的に制限しているという方は、その制限をやめてみても良いかも知れません。
その他の栄養素として、ビタミンAやビタミンD、亜鉛などの栄養素がテストステロン分泌に必要であることが示唆されています。
まとめ
今回は男性ホルモンの1種であるテストステロンについて解説しました。
テストステロンは副腎でコレステロールから作り出されるステロイドホルモンで、筋力の増強、メンタルヘルスの改善・向上、骨粗しょう症の予防などの効果があります。
そんな良い効果のあるテストステロンの分泌を増やすためには、筋力トレーニングを行う・体脂肪量をへらす・適切な栄養素を摂取することが必要です。
特に年齢を重ねるとテストステロンの分泌も少なくなってしまうので、高齢の方ほど、これらを積極的に行うようにすると良いでしょう。
この記事を書いたトレーナー

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